経済史入門―経済学入門シリーズ
入門であり、一つの到達点です
そもそも川勝教授の海洋史観が「経済学史入門」として日経文庫に取り上げられたこと自体が、画期的なことだと思います。
教授は、唯物史観が描ききれない「物産複合」と「新結合」という概念を導入し、人間中心でもなく環境原理主義でもない新しい経済学史の在り方を示しました。
いわゆる「川勝節」も健在です。膨大な先人の研究成果を簡潔明瞭に引用しつつ、貿易が各地の文化・経済に与えた影響を示し、経済の在り様と変遷を明らかにしていきます。
ここで示される経済学史は、イデオロギーとは無縁の、正に「経済」の歴史です。大局観を見失わず、各地の実情にも目を向ける、誠にバランスの取れた歴史観がそこに示されています。
そうした歴史観が、今まで見過ごされていたアジア経済圏に光を当てることで誕生したというのも興味深いことです。全体に目を配り、ありのままに解釈するという著者の姿勢には心から共感できます。
新しい視点による日本論へ
「入門」というタイトルだが,学説を紹介するだけのテキストではない.
あくまで著者自身の視点から経済史の枠組みを読者に提供する,
小さいが野心的な書物だ.
特に産業革命期の英国と同時代の日本を並列し,ユーラシアの両端の
島国がともに東アジア交易を通じて「勝ち組」になったという見方が
面白い.「アジア」をひとまとめにして後進地域とする西洋史学の
観点を否定するものだ.日本が金銀銅の生産国として,当時からアジ
ア経済を支配していったという論証も自分にとっては発見だった.
西洋史学の枠組みを超えた史観
小冊子ながら内容が非常に濃い。前半はマルクスを含むアダム・スミス以来の経済学、文明論、発展論をその時代を背景にしながら簡潔にまとめている。前半単独でも各々の学説が明快に位置づけされており、経済学史、文明論史の入門として最適の書である。ついで、著者は新しい視点を提起し、後半においてその裏づけを縷々述べている。その新しい視点は具体性があり、これまでの西洋史学の枠組みを超えた史観を示しており、読者は単に知的な刺激を受けるばかりでなく、過去のみならず将来へむかって、自己の世界観の変更を迫られることになろう。
著者はその学問の姿勢として朱子の言葉を引用している。明治維新の原動力であった漢学の素養と思想が、この前途多難な時節に、新たな衣をまとって本書の形をとって生まれ出でたのなら、わが国に変革が訪れるのも遠くないであろう。
<<<経済と金融工学の基礎数学
ソニー銀行 道具としての銀行―フェアな金融機関とクレバーな個人の経済学>>>
[ 経済学 ]

