なぜ貧困はなくならないのか―開発経済学入門
ムケシュ エスワラン(著)
定価: ¥ 1,995
販売価格: ¥ 1,995
人気ランキング: 25889位
おすすめ度: 
発売日: 2000-07
発売元: 日本評論社
開発途上国経済のからくり
韓国や台湾などの東アジア諸国が「工業化→工業製品の輸出」主導により経済発展=貧困層の解消を果たしたのに対し、同じく工業化を志向したインドがなぜ失敗したのか。なぜ、まだインドでは多くの人が貧困にあえいでいるのか。端的にいうと①工業化以前に農業の生産性向上が充分に図られていなかった②また、工業化能力の見極め不足だった、ということです。こうした基本的な問いかけ以外にも、経済学の枠組みを用いて様々な知見が提示されています。
すなわち、「国際貿易がない場合、工業発展が貧困層の厚生を向上させる効果は極めてわずか」、「農業の技術進歩は間違いなく貧困層に利益を与える」、「工業発展の利益が貧困層に行き渡るのは農業が十分に発達している場合のみ」「農業未発達の段階で(貧困層が食料需要を満たすことだけにあえいでいる状態で)工業が発達しても、貧困層はより貧しくなるだけ」「インドの貧困層が国際貿易によって利益を得るか損失をこうむるかは技術進歩が他国に比べて早いか遅いかによって決まる、遅い場合はインドの貧困層は損失をこうむる」「インドの農作物輸出にブームが起きた場合、貧困層が利益を受けるかどうかはブームの内容による。それが海外需要の増加によるものであれば貧困層はいっそう貧しくなり、インド農業の技術進歩によるものであれば貧困層は豊かになる」など。
インドの開発経済を例にとり、機会費用、一般均衡、比較優位の考え方などの経済学の基本的フレームが理解できる、というのが本書の最大の魅力でしょう。この基本的フレーム・モデルを理解することによって、例えば農業の対外開放などの今日的問題への理解も深まります。工業化や貿易自由化が必ずしも開発国の貧困層を救うわけではなく、より窮乏化させることがある、一見常識的なものの見方を変える良書。
非常に面白い
非常に面白い本です。これまで経済学をやっていた人は目から鱗が落ちるかもしれません。しかし、エスワランやコトワルといったこの本の著者は主流派経済学の世界ではほとんど無名の存在です。なぜなら、この本の内容(あるいは冒頭の謝辞に並んでいる経済学者の名前)からわかるかもしれませんが、資本家・地主・小作人と分けて分析する手法は、経済学では傍流のポストケインジアンやネオマルキストに属するからです。よって、彼らの論法がスタンダードな開発経済学のテキストに載ることはありませんが、これは単なる派閥の問題か、彼らの論理に欠陥があるのか、読んだ本人が議論してみると理解が深まると思います。
明快!
韓国が工業化で成功したのに対し、インドはなぜ工業化で成功できなかったのか・・・。モデルを使ってロジカルに解説されており、その明快さには、快感さえも覚える。
経済学の知識は無くても読み進めることはできるが、大学の一般教養レベルの知識はあったほうがいいと思う。経済学は、一定の想定を置いたモデルからスタートし、その想定を1つずつ外していき、現実に迫る手法をとることが多いのだが、本書でも、そのようなスタイルをとっている。したがって、基本中の基本の考えが頭に入っているほうが、本書の醍醐味を感じることができるだろう。
たとえば、食料と繊維の2材モデルで、繊維の価格が低下すると、繊維の需要が増える、という一般的な想定に対し、本書は、貧困層は繊維の需要を増やさな???と想定する。これにより、結論はどう変わるか?
また、この本書のいいところは、モデルで遊ぶだけではなく、「だったら、どうすればいいのか」という提案を出している点である。こういう条件のもとでは、こうすべき、という点が明快であり、その思想のベースは、貧困の解消で筋が通っている点もよいと思う。
<<<価値共創の未来へ―顧客と企業のCo‐Creation
市場社会の思想史―「自由」をどう解釈するか>>>
[ 経済学 ]
