貯蓄率ゼロ経済―円安・インフレ・高金利時代がやってくる
櫨 浩一(著)
定価: ¥ 1,890
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発売日: 2006-01
発売元: 日本経済新聞社
シリアスな問題
ライフスタイルや消費性向の変化により貯蓄率が低下する話かと思って読み始めたが,実にシリアスな問題であった.
少子化,団塊の世代リタイヤにより,これまで高いとされてきた日本の貯蓄率は確実に低下する.壮年期の蓄えによってを過ごそうという老年期の人々が増え,またサービスの提供側の人狽ェ減り,サービスの単価の高騰が予想される.その結果,日本全体で企業が設備投資に回せる資金が枯渇し,生産活動の低下をもたらし,経常収支と財政の双子の赤字をもたらし,さらには円安に陥るとともに金利が上昇する.そこまでの論理に破綻は見出せないように思う.
これまでの,設備投資の大きさによって経済の動きを計るような人々,いや豊かな日々の生活に慣れきった我々にとって,恐ろしい社会となるように思える.
一生懸命働いて貯蓄したところで,目減りは避けられないという事実は,年金の問題で薄々は感じてはいたが,本書のように喝破されるとかえって心地良い.
解決手段としては,老年期の人々の勤労であったり,ワークシェアリング的な方法,雇用の流動化などが挙げられているが,勤労構造の変化から入らねばならないということもわかる.
一度読んでおいて損は無い.
誰でも悩む疑問にスッキリ答える
経済や市場を真剣に考える人なら、高齢化等により貯蓄率が
低下すると思い至るだろう。しかしその時どうなるか?
いろいろな前提がありすぎて、詰めて考え難いのが現実。
その問題に、ズバリ答えている。面白くてためになる。
ただし本書が実現するのが2050年か2020年かで、
私たちの行動は全く違う。時間軸をしっかり考えながら
読むと大いに啓発されるだろう。
また前提がずれれば別の結果になる点も留意すべきである。
変革期の日本経済を的確に見通しているスゴイ本
変革期の日本経済について「貯蓄」をキーワードにして大胆に立論したスゴイ本である。
エコノミストの目から見て、この本を短く表現すれば、「動学的非効率性に陥った第1次石油危機以降の日本経済が動学的効率性を取り戻す過程の経済分析と予測」であろう。しかし、直感的にせよ、動学的効率性について余りに無理解だと「トンデモ経済学」に見えるかもしれないが、それこそトンデモナイ意見であろう。
では、動学的効率性(dynamic efficiency)に欠ける経済には何が起こるか?
第1に、資本の過剰蓄積が生じて、黄金律成長に戻るためには過剰資本の取崩しが合理的となる。第2に、政府債務が永遠にサステイナブルとなり、ポンジーゲームに陥ることがない。ただし、第2点目は国債金利と資本収益率を同一としたら、との前提。
動学的効率性を取り戻す過程で、貯蓄ゼロのために円安、インフレ、高金利、経常収支赤字を招来するとの著者の見方は卓見で、まさしくその通り。しかし、動学的非効率な現状を見慣れすぎた人々にはショッキングかもしれない。また、投資が成長を牽引する経済から、豊かな消費が経済の主役になる経済を描き切れていないのはやや惜しい。それから、終章がさえないので読後感が悪い。
最大の疑問は、著者がエコノミスト的に「動学的効率性」を理解してこの本を書いているかどうか。一度聞いてみたい気がする。しかし、エコノミスト的に理解していなくても、直感的にここまで立論できるのはすばらしいと思うので、著者の理解云々は無用の議論かもしれない。
細かい論点を取り上げるカミソリの議論ではなく、斧でバッサリと日本経済の将来を切るような、長期的で大局的な方向観を知りたい人にお勧めする。また、30年余りの動学的非効率経済に慣れ親しんできた中年以降の人にもお勧めするが、特に貯蓄ゼロ経済に直面する若い読者にお読みいただきたい。
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